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就職事例

つながりが持てる場所

通信制高校に通うSさんがはじめて見学に来たとき、全身黒づくめの服にマスクをしていました。唯一信頼していた担任の先生に連れられて、「先生が言うなら、ここに来てみてもいいかな」何か自分を変えたいと思っていたタイミングでした。やっと登校できるようになったSさんに先生は、「学校を離れても、関わり続けてくれる人たちがいてほしい。つながりを持てる居場所を作ってあげたい」と思ったそうです。
週1~2回の登校に、訓練は週4日。訓練生といっても学業を優先しなければならず、学校との連携は常時でした。訓練ではSさんのアイディアが発揮されたり、手先の器用さから仕事が生まれたり、カリキュラムもどんどん吸収していきました。学校では、部活や生徒会、得意の文章を書くことで弁論大会にも出場。眠っていたSさんの本来の力がいたるところで輝きだしました。


― 作業で使用する備品作成の様子

ストレングスに注目

「将来は、尊敬する父親と同じ建築関係の仕事に就きたい」そのために必要なことを職場実習で経験する。現場で大きな声がだせること、挨拶をしっかりすることなど目標に掲げ、自宅の近くにある小さなスーパーで働きます。しかし、思うようにいかず、次の実習は大手スーパーへリベンジ。作業そのものは器用にこなす一方で、接客態度を注意されたり、厳しい評価を受けたり、社会の理不尽さも経験します。自分がどんな仕事が向いているのか迷いもでてきました。
Sさんの良さ、強み(ストレングス)をもっと発揮できる仕事は何か?【いまだマスクをはずせない・人前に出ることが本当は嫌・他人に愛想ふりまくことはもっと嫌・同時に多くのことをしなければならないのは苦手・人によってやり方が変わることに混乱】 一方、ストレングスは、【作業にスピード感がある・手先が器用・いわれたことを素直にやる・真面目で正義感がある・体力に自信がある】これらの特性を見て、製造業の職場実習をやってみることにしました。


― 実習先のスーパーで商品補充するSさん

特性が仕事になる

白石食品工業への職場見学を実施。まずは工場のいろいろな側面を見てもらい、将来一つの部署にとどまることなく、スキルに応じてさまざまな仕事ができる可能性のある会社であることを知ってほしいと思いました。1度目の実習は2週間。すぐに手先の器用さが発揮され、速さが一定のライン作業とマニュアル化された作業工程はSさんにとってやりやすく、ミスを確認しやすいものでした。
再実習はクリスマスシーズンの繁忙期に約4週間行い、実際の雇用条件に合わせ、朝6時出勤でも遅刻しないか、体力はどうか、作業は確実にできるかどうか、細かい点を確認しました。
工場はマスクかけ放題で、仕事に集中できる環境。得意のスピードを求められながら、一つ一つ工程を完成させていく。少し飽きっぽい性格も、季節ごとに新しく開発される新商品がSさんのモチベーションにつながっています。


― 白石食品工業での職場実習

「家族みんなの幸せが、わたしの幸せ」

中学時不登校でのつらい経験。心の支えとなったのは家族の存在でした。訓練中もよく「早く稼いで、家族に恩返ししたい」と言っていました。いざ働くようになると、家族とのすれ違いが多くなり休日もまちまち。そうした環境がかえってSさんの行動を変えていきます。以前よりも家族といる時間を大切にし、自分から会話をするようになりました。
朝は自分でお弁当をつくったり、休日は家族に料理をふるまったり、毎月生活費を入れたりと、以前よりも家族の一員としての役目をはたせるようになったことに喜びを感じているそうです。兄弟仲がよく、「兄の誕生日に時計を買ってあげました!」と嬉しそうに話すSさん。暮らしにゆとりが生まれ、家族の笑顔と幸せを実感できることが、働く原動力の一つとなっているのかもしれません。


― 白石食品工業での職場実習

今後について

就職を機に、高校休学の道を選んだことは一大決心でした。ですが、「仕事をしっかり覚えたい。専念したい。」と最後は自分自身が選択し、こうして今やり続けていることに誇りをもって働いています。
現在行っている調理パンの業務は、何十種類にも及びます。主には、パンの具材を定位置に適正な分量を挟む業務を行っています。一つの調理パンを終えるとラインを消毒、道具の洗浄や、手洗いも毎回行います。食品工場として何よりも徹底される衛生管理。そこに取り組む姿勢は、Sさんの誠実さ、真面目さがよく発揮されている部分です。
「将来は製造だけでなく、新商品の開発にも携わってみたい」周りから期待をされながら、日々経験を積んでいるところです。